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最高裁判所第二小法廷 昭和51年(オ)876号 判決 1976年11月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人吉田朝彦の上告理由第一点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第二点について

使用者が身元保証法三条所定の通知義務を怠つている間に、被用者が不正行為をして身元保証人の責任を惹起した場合に、右通知の遅滞は、裁判所が同法五条所定の身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるうえで斟酌すべき事情とはなるが、身元保証人の責任を当然に免れさせる理由とはならず、また通知の遅滞が右斟酌すべき事情として考慮される以上、使用者は身元保証人に対して通知の遅滞に基づく損害賠償義務を負うことにはならないと解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第三点について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、被上告人の上告人らに対する本件請求が信義則に反し権利の濫用にあたらないとした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第四点について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人らの賠償額を一〇〇万円に軽減したうえ、その限度で連帯して被上告人に賠償すべきものとした原審の認定判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉田 豊 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 本林 譲 裁判官 栗本一夫)

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